米国における健康保険のありかたと補完代替医療の普及とは、切っても切れない関係にあります。
健康保険といえば、日本では「国民皆保険」といううたい文句のもとに、国民の誰でもが何らかの健康保険に入ることを義務付けられています。自由さよりも公平さを重視した日本らしい制度で、そのおかげで国民は誰でも医療費の1〜3割を負担するだけで、最低限の治療を受けることができます。
この日本的医療供給システムは、国民の医療へのアクセスを容易にし、世界一の水準の平均寿命を達成しました。しかし一方で、医療に対するコスト意識を希薄にし、具合が悪くなったら医師にすべてを委ねればいい、という受動的な態度も助長しました。
米国は医療においても自由と自己責任が基本で、その表れの1つが健康保険制度です。米国では下記のように、国は一部の社会的弱者にだけ健康保険を提供し、そのほかは民間の自助努力に委ねます。
| 米国の公的健康保険制度 |
| メディケア |
高齢者や障害者を対象とする健康保険 |
| メディケイド |
低所得者層を対象とする健康保険 |
上のいずれにも該当しない人々が選ぶ道は2つあります。1つは、民間の健康保険に入ることです。ちょうど日本の生命保険のように、米国ではたくさんの保険会社がさまざまな健康保険プランを販売しています。日本の人が生命保険や車両保険に入るときにそうするように、米国の人は自分の年齢、健康状態、収入、家族の状況などを考え、自分に適した健康保険に入ります。もし病気になれば、その健康保険が予め約款に定めた範囲をカバーしてくれます。
もう1つの選択肢は、保険には入らない、ということです。ちょうど日本の若い人たちの多くが生命保険に入ろうとしないように、若くて健康に自信のある人々は、健康保険に入って毎月保険料を払うよりも、健康保険に入らないほうを選びます。また健康保険料はとても高いので、中所得者層でも、経済的な理由から健康保険に入らないという選択をする人々もいます。こうしていま米国には、約4700万人(人口の約16%)の無保険者がいます。この人々は万一病気になったら、医療費は全額自己負担することになります。ですから簡単に病気になるわけにはいきません。
健康保険に入っても安心はできません。毎月支払う保険料はかなり高く、健康保険料を会社が負担して良い保険を提供することが、良い人材を雇用する切り札となるほどです。さらに保険は医療費の全額をカバーしてくれるわけではなく、少なからぬ自己負担があります。軽度の疾患ではかなりの部分が自己負担になるので、保険に入っている人でも病気になるのはできるだけ避けたいという意識が働きます。
このように米国の人たちは、病気になることのコストを常に意識せざるをえません。医者にかからずに済むように自分の健康を自分で守ろう、という意識が広くいきわたっています。補完代替医療は、このような米国人が健康を増進し、病気を未然に防ぎ、軽度の不具合なら自分でなんとかするための、セルフケアの手段として利用されてきたのです。
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